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オンラインのメリットを活かす研修事例

以前に「オンライン研修は集合研修よりも研修効果が劣るのか?」でも書いたように、オンライン研修はその設計次第で、対面研修以上に効果性の高い人財育成施策を展開することができます。

今回は弊社が立教大学・中原淳教授、ダイヤモンド社と共同開発した、新人フォロー向けのフルオンライン研修 “DTP (Diamond Transition Program) for Freshers” を事例に取り上げながら、オンライン研修の企画・設計のポイントを紹介したいと思います。

Diamond Transition Program for Freshers(オンライン新人研修)詳細

研修転移の観点から見た「対面研修」の問題点

これまで当たり前のように実施されていた「対面(集合)研修」ですが、研修転移*の観点から考えると大きな問題点があります。

※「研修転移*」の詳細はここでは省略させていただきます。詳しくは『研修開発入門 「研修転移」の理論と実践』(ダイヤモンド社)を参照ください。

それはひと言で言うと「一極集中」の研修になりやすいということです。今後、コロナが収束に向かっていけば、徐々に集合研修の割合も戻って来ると思われますが、その場合も次に掲げる3点は常に考慮に入れた上で、研修の企画・設計を進めるべきでしょう。

①現場への負荷が大きい

オンライン研修と比較して、集合形式で実施した場合のデメリットの1つが、受講生の移動に伴う「時間コスト」です。拠点が全国に点在している企業の場合、研修会場のある本社や研修所などに参加者を全国から呼び寄せることになります。このことは、交通費・宿泊費など金銭的コストのみならず、受講生に大きな移動負担をかけることになります。

場所によっては、下手をすると移動に半日を要するため、1日の集合研修であっても前後の移動を考えるとほぼ丸2日を費やすことになります。若手・中堅など、前線で主力として活躍している人が研修に長時間かり出されることは、現場および受講生から大きなリアクタンスを生みます。

②必然性のないものまで詰め込みがち

①の「時間コスト」に連動しますが、人事サイドとしては、現場からのリアクタンスを減らし、また移動に伴う旅費交通費を最小化したいという意識が働くため、集合研修は自然と長期化しやすくなります。エネルギーをかけて現場を巻き込み、せっかく全国から受講生を集めるなら「まとめてやった方がおトク」という作用が働きます。

このことは研修の長期化をもたらします。つまり、せっかく「移動コスト」「時間コスト」をかけて集まったのなら、半日ではモッタイナイので、1泊2日(もしくは2泊3日)で実施しようという流れです。

研修時間の長期化は、図らずも「優先度の低い(業務との関連性が高くない)研修テーマ」を盛り込んでしまうリスクを孕みます。場合によっては「計画した研修時間の箱を埋めるためのコンテンツを用意する」という本末転倒な施策が取られることもあり得ます。

③単発のイベントに終わりやすい

研修転移(研修をやりっぱなしにせず、職場で実践に移すこと)を促進するためには、「フォローアップ」も重要と言われています。この点においても、現場から人を集める機会を作りづらい集合研修の場合は、どうしても1ショットの単発イベントで終わりやすい傾向があります。

研修転移を促進するためには、「学び」と「仕事」を切り離すのではなく、日常業務での課題を「研修(学び)」の場に持ち込み、研修で得られた気づきや習得した知識・スキルをしっかりと「職場(仕事)」に持ち帰り、両者を繰り返し往還させることが重要となります。この流れを作りづらいのが、集合研修だけに依存することの大きな問題点と言えます。

Point1) 短時間・高頻度で実施する

オンライン研修を企画・設計する上で抑えるべきポイントの1つ目は、「短時間・高頻度で実施する」です。

集合研修とは違って、オンラインでは「詰め込む」必要はありません。集合研修のように「移動コスト」「機会コスト」を配慮する必要がないからです。集中してアクセスする場所さえ確保できれば、研修開始の5分前にログインすれば十分です。感覚的にはオンラインのMTGに参加するのと何ら遜色ありません。

集合研修と比べると、会場設営などの手間もかからないため、実施の頻度(回数)を増やすことは、そこまでハードルは高くないはずです。

現場への負荷を下げる点に関しては、1回辺りの実施時間を短くすることで担保します。オンライン研修は疲労感も大きいため、2〜4H/回程度が妥当でしょう。1日単位でスケジュールが潰れる集合研修に比べれば、半日以下のスケジュール確保で済むオンライン研修の方が受講生にとっても、参加に対する心理的なハードルは下がるはずです。

冒頭でも紹介した、DTP(フルオンラインの新人フォロー研修)では、4H/回を基本として、3ヶ月に一度、入社後1年間で最大4回の研修を開催する形式を取っています。年に4回ものフォローアップの機会を設けられるのは、オンラインならではの利点です。

Point2) 必要な時に必要な武器を渡す

オンライン研修を企画・設計する上で抑えるべきポイントの2つ目は、「必要な時に必要な武器を渡す」です。

集合研修のデメリットとして「必然性のないものまで詰め込みがち」がありました。研修内容が現場での仕事と「関連性があるかどうか」は研修転移の促進に大きな影響を与えると言われています。受講生の視点に立てば「役に立たなそう」なものをアレコレと詰めこまれても、垂れ流しとなってしまうのは当然の帰結と言えるでしょう。

これが、Point1)の「高頻度で開催する」というオンラインの利点を活かすことによって、受講生にとってタイムリーな課題を扱うことができるようになります。

DTPの場合は、入社後3ヶ月ごとに新人期に「想定される壁」を仮設として持ち、それに連動した解決策を研修として扱う仕立てとしています。

例えば、入社半年が経過する第2ターム(10-11月頃を想定)では、徐々に仕事を任されるようになって、業務が逼迫するタイミングを迎えます。これにって、目の前のことに精一杯になって、成長実感を感じづらくなるという状態に陥りがちです。このため、「経験学習サイクル」と「フィードバックSeeking」というテーマを扱います。

前者が、日々の経験から得られた教訓をどのように自身の成長に役立てていくの?という視点を、後者は自身の成長を最大化するために、どのように上司・先輩からのフィードバックを意図的に役立てていくのか?という観点を学びます。

受講生の喉が渇いていないタイミングで、水(研修)を用意しても、それはムダに終わってしまうのです。

Point3) インターバルを有効活用する

オンライン研修を企画・設計する上で抑えるべきポイントの3つ目は、「インターバルの有効活用」です。

「短時間×高頻度」で実施することによって、複数のインターバルが生じます。ここを最大限に活用していくことで、研修転移が促進され、研修効果は最大化されます。

研修転移においては、研修前後の上司の巻き込みが特に重要と言われています。DTPにおいても【研修前】と【研修後】の両面から受講生の現場(新人フォロー研修のため、特に新人のOJTトレーナー)を巻き込む仕掛けを用意しています。

【研修前】現場を巻き込んだ事前課題の活用

【研修前】の巻き込みの有効施策の1つが「事前課題」の活用です。

DTPにおいては、各タームごとに新人に「研修テーマに関連した内容を先輩社員(または上司)にヒアリングしてくる」要素を必ず取り入れるようにしています。意図としては次の3つがあります。

① 先輩のナマゴエを聞いて来ることで、研修テーマをジブンゴトにしてもらう
② 研修前から巻き込むことで、先輩社員にも当事者意識を持ってもらい、研修後のフォローにつなげやすくする
③ リモートワークの影響もあって、減少しがちな職場コミュニケーションを補填する

例えば、第3タームでは、新人から先輩に対して「もう一歩の仕事」についてヒアリングして来てもらうようにしています。これは、先輩からみて「もう一歩の工夫やがんばり・配慮が欲しかった」と感じたことを聞き出してくるというものです。

なかなか面と向かってこうした話題は切り出しづらいもの。一方で先輩社員から見て「期待水準に一歩届かなかった仕事」には、新人にとって今後の成長につながるエッセンスが詰まっていると言えます。詳細は割愛しますが、オンライン研修の本編では、この「もう一歩の仕事」を題材に不足していた観点を掘り下げ、日常業務における改善点を明確にしてもらいます。

【研修後】アクションプランの作成と共有

【研修後】の巻き込みの施策が「アクションプランの作成と共有」です。

受講生だけではなく、受講生本人の上司(現場)を巻き込むことが研修転移には欠かせません。

例えばですが、部下が研修から戻って来るや、否や研修の話題には一切触れず「待ってました」とばかりに業務指示を出す上司と、「研修はどうだった?」と研修での学び・気づきを確認し、日々の部下との関わりやフィードバックに活かそうとする上司とでは、研修後の効果に差が出るのは自明です。

DTPにおいてはシンプルですが、研修終了直後に上司・先輩との共有、さらに1〜2ヶ月後に立案した行動計画の実践状況を振り返れるようなアクションプランのフォーマットを用意しています。また、次タームの研修では、冒頭で前タームに掲げたアクションプランの振り返りから入るようにしているので、「やりっぱなし」にできない仕掛けになっています。

さらに、前述の通り、研修開始前から「事前課題」として先輩社員を巻き込んでいることもあり、受講生・先輩社員が研修参加後の行動変容・実践に共同責任でコミットする仕立てとしています。

まとめ

研修の目的は、研修を受けることそのものではなく、受講した参加者が研修内での学び・気づき・収穫を職場で実践し、行動変容すること。それによって、ビジネスの成果に貢献していくことにあります。

繰り返しとなりますが、この観点に立った時に、現場への負荷を最小化しつつ、「高頻度での実施」により「必要な武器を必要なタイミングで渡す」ことができ、かつ「インターバルを活用して関係者を巻き込める」という点において、オンライン研修は極めて有効な教育施策と言えます。

安易に「オンライン=集合研修の劣化版」と捉えるのではなく、研修本来の目的から考えて、オンラインのメリットを最大限に活用していく企画・設計力が人財開発および教育担当者には求められているのではないでしょうか?


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