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オンライン研修は集合研修よりも研修効果が劣るのか?

2020年は企業研修の形態がそれまでの対面クラス形式(以後、「集合研修」)から「オンライン研修」へと大きくシフトする年となりました。コロナウイルスの一日も早い終息を願いつつ、今年も「集合研修orオンライン研修」の鍔迫り合いが続く一年となるでしょう。

あらためて、オンライン研修は集合研修よりも劣るのか?

正解なき問いではありますが、弊社ではオンライン研修の有効活用次第で、これまでより格段に効果性の高い人財育成施策を展開できると考えています。

1.オンライン研修の3つの壁

【 集合研修>オンライン研修 】

これが一般的に抱かれるイメージだと思います。かく言う私も、昨年3月の時点では「オンラインでは、とてもこれまでの集合研修のような学習効果は得られない」と考えていました。

これまでオンライン研修でご一緒して来たお客様・研修講師の声、および私自身の経験を踏まえると、オンライン研修には、大きく3つの壁が存在します。

反応が見えない

不特定多数の人を対象にオンライン上で話をしたことがある方なら分かると思いますが、オンライン研修における最大の壁は「参加者の反応が見えない」ことです。一人一人の取り組み姿勢や会場の雰囲気などたくさんの情報をキャッチできる集合研修に比べ、唯一、画面越しの参加者の表情だけが頼みの綱となるオンライン研修は、慣れないと非常にやりづらさを感じます。聞き手も「ミュート」のことが多いため、まるで宇宙空間に向かって一人孤独に話し続けているような感覚に陥ることも多々あります。

このため、オンライン研修では「参加者の反応を取る」ための工夫が欠かせません。例えばオープニングで受講生に声を発してもらうような働きかけも重要ですし、進行中も講師だけが一方的に喋りっぱなしにならないよう、集合研修以上に頻繁に受講生を巻き込むための仕掛けが必要です。

学びが深まらない

集合研修であれば、講義中もゼスチャーやホワイトボードなどを活用することで、重要箇所を強調することができます。また、ポストイットや模造紙を活用するなど、グループワークの進め方にも数多くの選択肢があります。

しかし、この点においてもオンライン研修で工夫できることは多様にあります。例えば、グループワーク一つでも、話し合いのためのワークシートを事前に用意し、(Zoomであれば)ブレイクアウトルーム機能を使えば、集合研修と遜色のない学びの場をつくることができます。大事なのは、事前の「研修設計」にあります。また、個人考察やグループディスカッションに関しては、周囲のノイズが入らず、場の雰囲気に流されづらいため、オンラインではむしろ集合研修以上の効果が得られるというのが私の見立てです。

集中力が保たれない

オンライン研修では、集合研修と違って「監視」の目がありません。メールやインターネット、さらに自宅からアクセスしている場合には、テレビ・家族などたくさんの「誘惑」があり、如何にして参加者の集中力を維持するかも重要なポイントの一つです。

この点においても、オンライン研修では「設計」「進行」の両面で、集合研修とはまた違った工夫が必要です。弊社の研修では、講師養成の世界的権威とされるボブ・パイクの「90/20/8の法則」をアレンジし、「60/10/3の法則」としてそのノウハウをご紹介しています。

2. オンライン研修の優位性

ここまで見てきたようにオンライン研修にはいくつかクリアすべき「壁」がありますが、それらは研修の「設計」「進行(ファシリテーション)」の工夫次第でその大部分を解消できます。
実際、弊社の【オンライン研修の設計&ファシリテーション】を受講いただいた方に、Zoomの投票機能を使って「オンライン研修に対する評価の変化」についてアンケートを取ったところ、「オンラインでも十分な効果が得られる」という声が大半(64%)を占めた上、約3割(28%)の方からは「対面以上に大きな可能性がある」というポジティブな回答が得られました。

このような回答結果が得られた理由として、集合研修にはない「オンライン研修」独自のアドバンテージが考えられます。

▼「オンライン研修の設計&ファシリテーション」実施事例

現場への負担感が少ない

オンライン研修の最大のメリットは「どこからでも移動時間なく参加できる」点にあります。特に事業所や営業拠点が全国に点在する企業の場合、集合研修をするのに本社や研修所に受講生を集める必要があります。遠方の場合は、宿泊を伴うことも多いため、受講生にとっては、研修時間+移動および滞在にかかる全ての時間が「拘束時間」となります。一方、人事部サイドとしては、現場から受講生を呼び集めるに一定のパワーがかかる上、会場設営など実施準備にも相応の工数がかかります。このため、「せっかく集まるなら」ということで、研修は「長時間化」しやすくなります。かくして、集合研修は現場サイドにとっては、非常に負担感の大きな「煙たがられる」存在となります。

この点、オンライン研修では移動時間がかからず、また「短時間化すること」のデメリットは少ないため、参加者の業務への負担を軽減することができます。

学びをよりタイムリーに提供できる

前項でも触れた通り、オンライン研修では集合研修に比べて「集めることの負荷」が軽減されます。これによって、より高頻度での研修機会を設定しやすくできます。また、「必要以上にコンテンツを盛り込む」必要もなくなるため、受講者に「必要なタイミングで必要なものを必要なだけ持ち帰ってもらえる」コンビニのような手軽さがあります。
受講生の課題感に応える研修企画をすることが大前提とはなりますが、研修の必然性や現場課題との関連性が生じるため、受講生の研修に対する当事者意識を高めることができます。

「研修転移」を促進しやすい

研修が「やりっぱなし」で終わることなく、受講生が学んだことを現場で実践したり、行動変容が起きることを「研修転移(Learning Transfer)」と言います。(詳しくは、拙著『研修開発入門「研修転移」の理論と実践』をご高覧ください) 
集合研修は実施負荷が高いために「単発」で終わがちなのに対して、オンライン研修では「高頻度・複数回」での実施がしやすくなります。研修転移を促すコツの一つは、研修後のフォローアップにあります。研修後に事後課題を課し、その実践を継続的に振り返りやすいオンライン研修は、より研修転移は高まりやすい=研修の効果性が高いと言えます。

3.オンライン研修の限界

一方で、やはりオンライン研修にも限界があります。設計・進行面で如何に工夫をしたとしても、オンライン研修が集合研修に及ばない点が2つあります。

複雑な演習は困難

オンライン研修では、画面越し(視覚情報・聴覚情報)にしか情報を伝えることができないため、やはり体感覚を伴う情報の伝達には限界があります。例えば、マナー研修における名刺交換や入退室の動きなど、身体動作や臨場感を伴うものは不向きです。また、実験の機材や道具などを用いる必要がある研修は「対面」に分があります。

ネットワーキングには不適

オンライン研修では、オンタイムに入室して、終わればボタン一つですぐに退室できる効率性がある反面、前後の糊代が全てカットされてしまいます。例えば、研修前後や休憩中の受講生同士の雑談や、講師との会話・質問といった時間がカットされてしまいます。既に対象者同士が関係性がある間柄なら問題ないかも知れませんが、例えば、入社したばかりの新入社員同士の関係性を深める場合などは、やはり集合研修に優位性があります。

4. まとめ

ここまで、「オンライン研修の3つの壁」「オンライン研修の優位性」「オンライン研修の限界」について順番に見てきました。

昨年一年の「withコロナ」期間を通して、オンライン研修が万能ではないにせよ、その利便性と可能性を大きく感じた企業は多いと思います。それを考えると、たとえコロナが終息したとしても、これまでのように「集合研修:オンライン研修=100:0」に戻ることは間違いなくないでしょう。

① オンライン研修の3つの壁である「反応が見えづらい」「学びが深まりづらい」「集中力を保ちづらい」を解消できるよう、研修の「設計」と「進行(ファシリテーション)」の両面から最大限の改善をすること。

② オンライン研修のメリットを最大限に活かしつつ、集合研修は対面でしかできないことに絞り込み、両者およびEラーニング(動画コンテンツ)をうまくハイブリッドした、「ブレンドラーニング」を追求していくこと。

今後、人財部門が研修施策を展開していく上で、この2点が当面の課題となるのではないでしょうか。



▼「オンライン研修の設計&ファシリテーション」実施事例

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